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GenshinData-1/Readable/JP/Relic15004_2_JP.txt
2021-06-07 00:55:03 -03:00

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Plaintext

冬の日を知らない鳥の羽。氷の中で凍り付いている。
この羽根が背負っている騎士の記憶はいずれ溶けるだろう。
北風に寄り添って、騎士は永遠に流浪した。
人々は北風騎士を畏敬した。敬い、遠ざけた。
人々のつぶやきに気付くたび、騎士はまた旅に出る。
寒冬はいつか終わる。騎士はたまに北風へとこう話しかけた。
「いつか」
口から出た言葉は、咆哮する寒風によって一瞬で凍りついた。
「春が見える。花が咲いて、渡り鳥が戻ってくるのが見える」
北風と共に行動した騎士は、記憶の彼方にあった春を待ち続けた。
凍りついた鳥の羽根を見て、自分は行き場のない渡り鳥だと自嘲した。